+++ 君が微笑むから +++
「葉山…」
ん? といった感じで小首をかしげる葉山をすっぽりと腕の中に納めて肩口に顔を埋める。
互いの体温が伝わる。
甘いシャンプーの香りが鼻腔を掠める。
「すきだよ…」
言って、口唇を重ねた。
柔らかい感触。慣れたようにわずかに開いたそこに舌先を滑り込ませる。
絡めた葉山のそれもなんのためらいもなく動き出した。
貪りあうような深い口づけ。
互いの存在を確かめ合うように、他人(ひと)の温かさを求めて息をつく間も惜しんで長い長いキスをした。
次第に熱くなってゆく身体。背中に回された葉山の腕にも力が入る。
「葉山…」
口唇を離すと、至近距離に柔らかく微笑む葉山がいた。
俺はもう一度葉山の肩にもたれかかった。
「…どうしたの?」
耳元に落とされた甘いトーン。
「どうもしないよ」
俺は軽く首を振り、葉山の首筋にキスをしてきつく、きつく抱き締めた。
「三洲くん…」
「―――すきだよ」
「うん、ぼくも三洲くんがすき」
そのままふたりでベッドに倒れ込んだ。
なめらかな素肌に手を這わせながら所有の印をいくつもつけていく。
隠し持っていた激しいまでの独占欲。
誰にも触れさせない。
誰にも渡さない。
ずっとこの腕の中に留めておきたい―――。
壊れてしまった葉山の心。こんなにまで深い傷を負わせたあの男に、この身体中に散った紅い跡を見せ付けてやりたい。
細い腰を抱き思い切り自分自身を打ち付ける。
その度に高くなってゆく葉山の声に身体が甘く震えた。
あっけなく達した葉山の中に俺も欲望の証を解き放った。
葉山の腕が俺の首に回り、柔らかく引かれる。
幸せそうな笑顔に誘われて、息を整える間もなくまた激しいキスにのめり込んだ。
―――すきだよ。
何度だって言える。
それできみが微笑んでくれるなら。
それでふたりの気持ちが繋がるのなら、何度だって…。
たった四文字。簡単な言葉。
「すきだよ…」
―――なんで、一度も言えなかったんだろう………
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