+++ もっと・きっと・ずっと +++

おまけ

このお話は「11」で「応対に出たギイに三洲が託生と出て行ったことを教えられ」たあとの300号室の様子です。
連載当時、どこにも入れられなくてボツにしてたのを、今更ながら引っ張り出してみました!
<2012.01.26>
 生徒会室を出たあと、真行寺は毎年恒例となっているグラウンドに並ぶいくつかの寝袋を横目に見ながら寮への道を急いだ。
 この敷地内のどこかにはいる…わかってはいてもはやる気持ちを抑えられない。
 寮に戻りまずは一階の章三の部屋に寄ってみたがやはりそこは無人だった。
 そして二階に駆け上がった。通い慣れた270号室の前で呼吸を整えてノックする。さすがにいつものようにノックと同時にドアを開けることはしなかったが、でもそっとドアノブに手を掛けてみると鍵が閉まっていた。
 …ここにもいないとなるとやっぱり300号室か。

 300号室の前に立つと、そこから賑やかな宴の声が漏れ聞こえてくる。
 たくさんの人の気配に、もしかしたら、と高鳴る胸でドアをノックした。
 だが、応対に出たギイの言葉にまた振り出しに戻った気分になる。
「三洲ならさっき託生と一緒に出て行ったぞ。部屋に戻ったんじゃないのか?」
「え…。いや、いなかったんです」
 ガックリと肩を落とした真行寺に、ギイは言った。
「まだ間に合うよ、真行寺。三洲を、探してやれよ」
 三洲の本音を、探してやれよと聞こえた気がした。
「はい。お楽しみのところお邪魔してスミマセンでした!」
 ギイの言葉に勇気付けられ、真行寺は律儀にも300号室の中に向かって一声かけて部屋を出て行った。


 ↓↓↓ ♪その後の300号室♪ ↓↓↓


【駒澤くんと野沢くん】
「さっき、部室から連れ出してくれたの真行寺なんです」
 ドアの向こうに消えた真行寺を心配そうに見送りながら駒澤が言った。
「ああ、そうだったんだ。あのふたりもうまくいくといいのにね。俺達みたいにさ」
 コツン、と野沢の頭が駒澤の肩に落ちる。
「そ…そうっすね」
 付き合って1年半にもなろうかというのに、未だこんな些細な野沢の仕草に動揺しながらも、駒澤も心から三洲と真行寺の幸せを願っていた。

【吉沢くんと泉ちゃん】
「三洲もさぁ、変な意地張ってないで真行寺と付き合っちゃえばいいのにね」
 三洲にズケズケとそんなことを言えるのは泉くらいだろう。そう思いつつ吉沢は
「さあ…。俺にはよくわからないけど」
 当たり障りのない返答をした。すると泉はうっとりするほど綺麗に微笑んで言ったのだ。
「だって真行寺ってイイオトコじゃん。ひとりにしとくのもったいないよ」
「そ…そうだね、うん」
 まさか泉が真行寺に惚れるとは思わないけれど、恋人を前にしてこうもハッキリと他の男を褒められるとさすがに落ち込みそうになる。
 「あ、もちろん僕には吉沢がいちばんイイオトコだよ」
 そんな吉沢の想いを知ってか知らずか泉がサラッと言った言葉に吉沢はドッと赤面した。泉との会話では未だ感情のアップダウンが激しくて大変な吉沢なのであった。

【矢倉くんと八津くん】
「またあのふたりもめてるんだ」
 ポツリと八津が言う。
「またってなんだよ八津」
 三洲とも真行寺ともそんなに関わりがあったとも思えない八津の発言に、矢倉は首を傾げる。
「ああ、前にもそういう場面に出くわしたんだよ」
「へぇ。そんな話聞いてないぞ」
 なんの気なしに返した矢倉の言葉に、八津の語気が少し強くなった。
「人の噂話は嫌いなんだ。陰で傷付く奴がいるかもしれないだろ」
 その言葉の意味するところを理解してハッとする。
「――ゴメン」
 矢倉が小さく謝ると、八津はひとつ瞬きをしてフッと表情を緩めた。
「…まあ、もう時効かな」
「八津…?」
 時効って、三洲と真行寺のトラブルの話が? それとも――。
「話してあげようか、夏にあったこと」
 そう言って、何かをふっきったように八津が微笑んだ。

【章三とギイ】
「な〜んか、急にムードが妖しくなってないか?」
 真行寺が去ってから、いきなりあちこちで妙な空気が流れ始めた。
「そうか?」
 わかっていながらギイがすっとぼけた返事をする。
「僕は葉山が帰ってきたら退散するぞ」
 今はまだギイがフリーだから相手にもなるが、そうじゃなかったらこんな空間にそう長くいられるものか。
「なんだ、章三も人恋しくなって来たか?」
「そんなこと言ってないだろ」
「携帯貸すから奈美ちゃんに電話しろよ」
 そう言ってパンツの後ろポケットから秘密のはずの携帯電話を取り出す。
「だから僕と奈美はそういうんじゃないって…」
 章三はいつものように否定する。だがギイはそんなことはお構いなしだ。
「まあまあ。明日駅まで迎えに来いくらい言えばいいのに」
「あのなあ…」
 思わず心底呆れたような声になってしまったのにはふたつの訳がある。
 ひとつはいくら否定しても奈美との関係をただの友達とは思ってくれないことに対して。
 そしてもうひとつは。ズバリというかなんというか、実はもう、実家の最寄の駅まで迎えに来る約束になっていたりするのだ。
 やっぱり相棒は侮れない、と章三は苦笑した。


 ↑↑↑ ♪みんなが幸せになれることを願って♪ ↑↑↑
novels top    home